Kanji & Kenji のチャップリン・トーク2「My Man Friday」
「スマイル・オブ・チャップリン」
第二部 『My Man Friday~チャップリン秘書・高野虎市』
幹二 チャップリンには日本人の秘書がいました。彼の名は高野虎市。この作品は、チャップリンと高野のつながりを、高野の視点から描いています。
健治 僕は高野の若き日と、晩年の彼に取材をする新聞記者を演じます。
幹二 そして僕は高野の老年時代と、回想部分で少しチャップリンを演じます。チャップリンと高野のツーショットの写真が残ってるんだよね。これ。
健治 眼鏡をかけてる人が高野虎市。本当にファッショナブル。
幹二 第二次大戦前でしょ。
健治 チャップリン、めちゃめちゃイケメン。
幹二 本当は高野の方が少し年上。絶対的な権力はチャップリンにあったけど、チャップリンって非常にフレンドリーな人で、家で働いてる人たちにも家族のように接していたそうなんだ。だからこうやって並んで座った写真が残ってる。
健治 高野自身、きちっとしてる人かなと思ってたんだけど、実は面白い人だったようですね。結構、愉快なエピソードとかがある。
幹二 いわゆる秘書役に収まるような人じゃなかった。
健治 つわものだった。
幹二 そう、つわものだったってことが、この作品の魅力の一つだと思う。一筋縄ではいかない男。そんな高野をチャップリンは、『My Man Friday』って呼んでいた。この言葉の意味は劇中で話しますが。
健治 脚本と演出がチャップリン研究家である大野さんだから、高野の本物の日記からの引用や、実際にあったエピソードとかを戯曲にいっぱい書かれているんです。
幹二 そうそう、この作品すべてを高野の視点で語る、という大野さんのアイデアは面白い切り口だと思った。
健治 だから、朗読劇的な要素の比重が高いんですよね。僕は、若き日の高野の内面とかを読み解くことになっているし、
幹二 僕は、高野の生い立ちとかをアルバムから朗読していくんだけど、つわものであることがよく分かる。15歳の時にパイロットになりたくて単身アメリカに渡ったりね、そんな冒険心に満ちた男が、チャップリンのドライバーを探してるって聞いて、面接を受けに行く。
健治 チャップリンのファンでも何でもなかったらしいですよ。
幹二 そこが面白いよね~。そして彼はチャップリンとアメリカを深く愛する人生を送ることになる。老年の高野って、結構アメリカ的な物言いをするんですよ。「私はこれだけしたんだ」とか、自己主張がすごく強い。
健治 それもまたチャップリンへの愛ゆえ、ですよね。表現者としてのチャップリンを、ある意味、父親のように、夫婦のように、常に見守り続けた人っていう。
幹二 いいよね~。
健治 なかなかそういう人はいない。
幹二 本当だよね。で、この二人にも別れが来る。ポーレットという女優がチャップリンの私生活に入ってきて、高野は押し出されてしまう。彼女に対する嫉妬心が凄まじい。そのくらい彼のことを愛していた。愛して、愛し抜いた男が、捨てられた時の悲劇ってものが、ちょっと垣間見れるんです。
健治 晩年までずーっと引きずってて、それがすごく切なくて。ユリコさんっていうお嬢さんがその意味を本当に理解した時に流す涙が、高野が築き上げた信頼や愛を表してるんだって思う。すごく切ないラストシーン。でも、幸せを感じる。
幹二 高野も愛された人だったんだって思えるよね。
健治 そうですね。