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Kanji & Kenji のチャップリン・トーク「リズム」

「スマイル・オブ・チャップリン」
第一部 「リズム」 
第二部 『My Man Friday~チャップリン秘書・高野虎市』 
第三部 「ミニ・コンサート」
密度の濃い三部作。それぞれの宝石の輝きを(幹二) 
芝居と歌で迫るチャップリンの魅力、その愛を感じよう。(健治) 
第一部 『リズム』
健治 これ、原作はチャップリンが書いた短編小説なんです。
幹二 1ページ半の話だった。
健治 それを世界初戯曲化!
幹二 そうなんです。
健治 僕は将校という役、これ、舞台の真ん中で右往左往する役なんですけど。
幹二 僕は歌手。
健治 将校と歌手、かつては親友だったんですよね。でも、時代に飲み込まれてしまい、最後は悲しい結末を迎えてしまう。
幹二 ですねぇ。
健治 将校は、軍隊に入って、訓練を受け、一定の「リズム」を与えられていくんです。歌手であった男は、反体制の詩を読んだりしてるので捕まってしまう。その二人が・・・。
石丸 処刑場で射殺をする側とされる側という立場で再会する。そこに友情や葛藤が垣間見えて、切ない物語になってます。
健治 二人の間にはいつも一人の女性がいるんですよね。
幹二 そう!
健治 愛の物語。これは1部、2部、3部の共通テーマでもあるんです。

幹二 この作品でチャップリンは、「体制に飲み込まれていく」「周りのリズムに巻き込まれていく」ことへの危惧を描いていて、「そうなると人間はどうなるのか?」と問いかけていると思うんだけど、飲み込まれる側の将校を稽古していて、どう?
健治 演出の大野さんからは、切羽詰まった感じとか、ひりひりした部分を出してくれと言われているんです。僕らがキリキリ追い詰められていき、集中力がどんどん高まって号令を発していくと、稽古場がどんどん暗くなっていくんですよ。最後に向かって「うあーっ」て息が出来なくなる感じがするんですよね。
幹二 そうなんだよね。冒頭から『ボレロ』みたいに一貫してリズムが刻まれていく。途中、幸せなシーンで緊張はふっと緩むけれど、最後の場面では、このダッダダダダダーっていうフレーズがずっとリフレインしている。人々のしゃべり方もリズム通りになっていって、まるでマスゲームみたいになっていく。
健治 本当に。洗脳に近いところがある・・・。喜劇王と呼ばれるチャップリンは、鋭い視点でそんなリズムの恐怖、慣れの恐怖、団体の恐怖を見抜いていたんですね。僕が演じる将校は、権力の側にいて、リズムにはまっていく立場なんだけれど、人間としては、すごくもがいているんです。そんな男の葛藤を表現出来ればいいんじゃないかなぁと思ってるんです。
幹二 この作品の世界って、現実にどこかで起こっていても不思議じゃない。人間って、リズムに安心する部分があるんだよね。だって、何かに乗っかってると楽じゃない?で、そのリズムの受け皿が間違った方向に進んでいても気づかないことがある。それが怖いよね。そんな中、反体制派の詩人でもある歌手は、そのリズムに全然はまることはせず、ずっと主張し続けている。僕は、音楽をやってるから、一緒に乗りたくなっちゃうんだけど(笑)。いかに乗らないで行くかが課題。
健治 上演時間が30分という短い作品ですが、濃いです。
幹二 ほんと濃い。
健治 でも、楽しいところもあって、石丸さんの踊りがあります。
幹二 (苦笑)踊りというか、あれは歌振りですね。
健治 (口ずさむ) ティティナ、ティティナ(笑)。
幹二 まぁ、ちょろっとだから、さ。
健治 ものすごくキュートです。