浅利慶太先生の訃報に接し
浅利慶太先生は、私の一番の恩師です。
音楽大学に在学中、演劇について何も知らないまま受けた劇団四季のオーディションで私に目を留めてくださり、「君には『オペラ座の怪人』を勉強してもらう」と、 演劇の世界に導いてくださいました。 それから17年。一貫して厳しく丁寧にご指導いただきました。 今、私が俳優として、また歌い手として活動ができていますのは、 浅利先生が私の中に植え付けてくださった、舞台俳優としての確固たる精神と、揺るぎない技量という土台があってこそ、と思っております。
何より、「演劇は一人の力ではなく、仲間と共に創ってゆくもの」という姿勢を、時に笑顔を交えて、そして辛抱強く教えてくださいました。私たちは、先生を中心とするチームという気持ちになったものです。
浅利先生の訃報に接し、昨年12月、劇場でお目にかかった際、「お前は舞台に立ち続けるんだぞ」と、言葉をかけてくださった先生のお顔が脳裏に浮かびました。 私にとりまして浅利先生は、いつも行き先をしっかり照らしてくださる灯台のような存在でした。
心より感謝と哀悼の意を表します。
石丸幹二