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『コースト・オブ・ユートピア』

『コースト・オブ・ユートピア』が無事に幕をあけました。ほぼ2ヵ月にわたった稽古では、1シーンごとに色々なパターンを吟味しつつ、9時間分の大河ドラマを丁寧に織り合わせていった感があります。特に男性陣が政治談議を交わすシーンなどは、日を置いて稽古するたびに立ち位置やセリフのニュアンスが変り……、演出の蜷川氏が求める、「ビリヤードの玉が弾きあうような」セリフの応酬を目指しての粘り強さを示していました。とあるシーンなどは最終通しの後、さらにガラリと変わったほどです。視覚効果を狙ったロンドン版、ニューヨーク版とはまったく趣を異にした、俳優の身体に全面的に委ねた芝居を存分にお楽しみいただければと思います。ちなみに石丸は、今回も新たなハードルを頂き、三部では、よれよれクタクタの男に挑戦しています。初日をご覧いただいた某新聞の演劇記者氏は、そんな石丸オガリョーフに対して、「妙に共感してしまうんだよね。現代人に通じるというか」との印象を持たれていました。そして、お隣にいらした演劇関係の男性ともども『男と女が泣ける二部。男泣きする三部』と評しておられました。「一部はバクーニン家をめぐる物語」となっており、蜷川氏の言葉を借りれば、これはもうチェーホフ劇です。