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近況報告です。

『コースト・オブ・ユートピア』の開幕が近づいてまいりました。今は、舞台稽古が佳境に入っています。19世紀のロシア、社会の変革を志す知識人たち。と聞けば、「遠い国の政治の話なのか……」と、観劇にも少々気合が必要なように思われますが、実際は思わず身を乗り出して聞き入ってしまうセリフ、まるで今そこで自分たちが考えているような想い、などが重なり合って展開してゆき、時間の経過を忘れてしまいます。劇中、阿部寛さん演じるゲルツェンが語るセリフに、現在、展覧会が開催中のゴーギャンの絵のタイトル、「我々はどこから来たのか。我々は何者か。我々はどこへ行くのか」に通じる言葉があったり、と、ご自身の心に響く言葉を求めて観劇されるのもひとつかもしれません。そのゲルツェンと終生、固い友情で結ばれているのが、石丸の演じるオガリョーフです。彼らの絆がどれほど強いかは、ゲルツェンが生涯をかけて執筆した大著「過去と思索」がオガリョーフに捧げられていることからも分かります。舞台上、二人のちょっとしたアイ・コンタクトやセリフの裏に潜んでいる情愛を感じ取るのも面白く、そんな彼らに関わることになった女性たちの心情に思いを馳せることも一興かもしれません。劇場でお待ちいたします。